タネも仕掛けもない、節(ふし)が抜かれた竹筒2本。餌も入れず湖に沈めるだけで、あら不思議、ウナギが捕れます。
実際は沈める場所の水深や水温などを考えながら仕掛けるものですが、それにしてもとても簡易な仕掛けです。「餌もないのになぜウナギが入るのか?」「蓋やカエシがなくて、ウナギは逃げないのか?」などの疑問が出てきます。他の地域では、一度入ったウナギが抜け出さないようにカエシと呼ばれる仕掛けがつけられていることがあります。しかし三方湖の漁師さんは「カエシをつけたらウナギが入らなかった」と言います。
三方五湖では、海水の日向湖をのぞいてウナギを獲る漁が盛んで、その漁法としては「縄漁」と、この竹筒を使用した「筒漁」が主流です。筒漁は、ウナギが狭い場所に入り込む習性を利用して捕獲する漁です。そのため餌がなくても筒に入りますし、カエシや蓋を付けなくても逃げ出さないのです。漁師は仕掛けた筒を真っ直ぐ、そっと引き上げます。その間「ウナギは筒の中に留まろうとする」と漁師は言います。人から見れば罠ですが、ウナギからすると、そこは居心地の良い巣なのかもしれません。手元まで上げると、筒用のタモを片端にあて、そこにウナギを落とすように筒を傾けます。筒からウナギを受けるタモは、口が狭く、あみが深く作られています。これは捕まえたウナギがタモから飛び出して逃げるのを防ぐためです。
筒で獲れたウナギは傷がつきません。そのため小さいウナギはそのまま湖に返しても弱ることなく成長することができ、資源保護にも適した漁法といえます。
近年は竹を採る手間や、耐用年数の関係で塩ビパイプなどで作ります。2、3本の筒を束ねた状態を1カラゲと言い、湖底に刺した竹ざおに括り付けて仕掛けます。昭和40年頃まではウナギが良く捕れ、その頃は250mの幹縄に5m間隔で50カラゲの筒を取り付けて、これを一人当たり8縄仕掛けたと言います。漁期はウナギが活動的になる4月から11月頃までですが、冬の間も仕掛けはそのまま置かれています。
三方湖を眺めると何か棒が立ててあるところがあると思います。その下には筒や柴が沈めてあるのです。
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