最近、テレビなどでドローンという言葉をよく耳にします。ドローンは、命令を受けて自律飛行する飛行物体のことを指し、別の用語のUAV(Unmanned aerial vehicleの略:無人飛行機)と同義に使われることもあります。テレビなどでは、主にマルチコプターを指して、ドローンという言葉が用いられているように思います。マルチコプターは、ヘリコプターの1種であり、ローター(回転翼)が3つ以上の回転翼機のことを指します。今年の夏と秋、慶應義塾大学一ノ瀬友博研究室と清木康研究室によるUAVを用いた空撮(上空から地上の写真を撮影すること)の機会に同行させていただきました。そこで、そのときの写真を参照しながら、UAVによる写真撮影とはどういうもので、どのように役に立つのか、その利用可能性について紹介したいと思います。
UAV(ドローン)には、大別して2タイプがあります。1つは、上述のマルチコプタータイプです(写真1:清木研究室所有のInspire 1)。ローターの数が4つの場合はクワッドコプター(機種の例:Phantom 3、Inspire 1など)、6つの場合はヘキサコプター(機種の例:Hornet、Boomerang、Spider、Trimble ZX5など)、8つの場合はオクトコプター(機種の例:X1000)と呼びます。もう1つは、飛行機のような翼をもった固定翼タイプです(写真2:一ノ瀬研究室所有のeBee/その他の機種の例:Trimble UX5、Gatewing X100)。
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写真1. マルチコプタータイプのUAV(例.Inspire 1) | 写真2. 固定翼タイプのUAV(例.eBee) |
いずれのタイプのUAVも、備え付けられたカメラで上空から地上を撮影することができますが、その特徴は異なります。マルチコプタータイプのUAVは、飛行可能時間が概ね20分程度までであるのに対して、固定翼タイプのUAVは、概ね30~50分程度です。飛行可能時間が長くなるとそれだけ長い距離を飛行できるので、固定翼タイプのUAVの方がより広い範囲の地上を撮影できるということになります。実際に、固定翼タイプのeBeeは、1回の飛行で約150 ha(1.5 km2)の範囲を撮影できるのに対して、マルチコプタータイプのUAVでは数百mの範囲に限られます。eBeeは完全自律航行を行い、自動で飛行しながら垂直方向(真下方向)の写真撮影を行う点も大きな特徴の1つです。eBeeは手動での操作をほとんど行う必要がありません。写真3は、eBeeで撮影された福井県里山里海湖研究所付近の写真です。写真の左やや下側には、三方湖の湖面に浮かぶ浮葉植物ヒシのロゼット(葉っぱの集まり)が映っており、小さいロゼットの集まりを判別することができます。1回の飛行で、鮮明な写真を広い範囲にわたって撮影するeBeeの能力には、とても驚きました。
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写真3. eBeeで撮影された福井県里山里海湖研究所付近の写真 |
一方、マルチコプタータイプのUAVは、飛行可能時間は限られているものの、手動による操作によって特定の対象を多方向から詳細に写真撮影することができます。機種によって、垂直方向や水平方向、斜め方向からの柔軟性の高い写真撮影を行うことができます。写真4~6は、Inspire 1によって撮影されたものですが(いずれも、慶應義塾大学清木研究室 古瀬達哉君による撮影)、被写体を自在に撮影するその能力には、やはりとても驚きました。後述しますが、このように自在な写真撮影は、撮影者の技量によるところも大きいと言えます。
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写真4. Inspire 1で撮影された垂直方向の写真 | 写真5. Inspire 1で撮影された水平方向の写真 |
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写真6. Inspire 1で撮影された斜め方向の写真 |