福井県里山里海湖研究所

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樋口 潤一 の論文
研究活動の紹介(樋口研究員;里地里山文化)

里山里海湖で育まれた文化を研究し、これからの活用につなげる活動をします。

 いまの生活は、勤め先があって給料をもらって、稼いだお金を使って暮らすというのが一般的です。その生活の中では里山などの自然は非日常の場です。ところが昭和の初めごろまでは、里山里海湖こそが生活の中心にあったのです。そこでは焚き木などの燃料を拾い、落ち葉は堆肥にし、山菜やキノコや魚などの採集、子供の遊び場など、絶えず出入りし自然の恵みを享受してきました。物質的にも精神的にも豊かな恵みを受けていたのです。いま生活の変化で離れてしまった里山里海湖ですが、もう一度見直せばそこには多くの資源があるはずです。里山里海湖で育った生活文化を見直し、活用しながら次の世代に引き継ぐ活動を目指します。
 

三方五湖の生業について

 日本農業遺産に認定された「三方五湖の汽水湖沼群漁業システム」は、水深や塩分濃度が異なる各湖において独特の漁法が続けられてきたことが評価されたものです。その漁法に使われた道具を、実測図をいう比較研究可能なかたちで記録を取り、それを元に北潟湖や琵琶湖など他地域の漁業と比較し、その特徴を評価します。また合わせて、三方五湖の漁業以外での自然資源利用法、祭りや伝統行事などについて聞き書きを通して調査し、里湖の循環的利用を明らかにします。得られた知見は、日本農業遺産認定地の伝統文化のさらなる価値の向上と、次世代への継承につなげます。
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福井県に残る焼畑習俗

 日本の伝統的な焼畑は、山の斜面地を伐採し火を入れ、そこに耕地を形成し4年ほど作物を作ります。その後は森林に戻し20~30年ほどの休閑期間を設けて地力を回復させ、再度伐採からのサイクルを繰りかえす循環的な農法です。その自然の再生力に合わせた農法は世界から注目され、国内には世界農業遺産に認定されている焼畑地域もあります。戦前ごろまでは日本中で行われてきたこの農法も、いまは国内で数か所しか残っていません。その1か所が福井県にあるのです。
 県内の焼畑は山間部において広く行われ、雑穀や、その土地在来のカブや大根などを作っていました。中でも嶺北の白山麓から続く場所は「白山麓の焼畑習俗」として昭和60年に国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財とされています。
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 今でも斜面に火を入れて作られる「河内赤かぶら」は、福井県の伝統野菜「福井百歳やさい」のひとつに認定されています。7月中旬頃に草木を刈り、刈った草木が乾燥する8月上旬頃に火を入れ畑を焼く。畑を焼くことで病害虫や雑草が抑えられ、また草木を焼いてできた灰が肥料分となるため、農薬や肥料は一切使用せず作られます。ここには900年程前に平家の落人が村に住みつき、平家の象徴である赤色のかぶらを後世に残したいと、赤かぶらの種と栽培技術を村人に伝えたという伝承も残っています。

 大野市上打波の「嵐かぶら」も、もともとは山の斜面を焼いて作られていたといいます。ここでは雑穀を作るハルナギと夏に株をつくナナギの2種類の焼き畑がありました。今は焼いていませんが、まだ経験者からお話を伺えます。

 これらの貴重な里山文化を調査研究し、県内に残された焼畑習俗の価値をしっかりと評価することで、次世代に里山とそこで育まれた文化の継承を目指します。
 

県内の伝統工芸や、文化財保存に使われる素材の調査と確保

 里山里海湖に眠る資源を掘り起こし、経済活動に結び付け、資源の保全と活用の循環を目指します。自然素材や耕作放棄地と、それを利用して経済活動を行なう生産者、そして高品質国産材を求めている現場を結びつけることで途絶えていた産業、眠っている資源を使った、新たな活用法を探りたいと考えています。

 小浜市上根来の若狭桐油

 小浜市上根来では桐油を採るためのアブラギリが多く栽培され、今もその資源は豊富に残っています。そこで採れる桐実を使い県立若狭東高校とNPO法人暮らしに水舎が共働して「若狭桐油」を開発しました。これは国内では唯一生産されている桐油であり、国産原料使用に重点を置く文化財修理現場などでの活用が見込まれ、県外の保存現場で試用を始めています。またその材も桐の代用材としての活用が見込まれます。

 

福井県里山里海湖研究所

福井県里山里海湖研究所

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