福井県里山里海湖研究所

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中村 亮 の論文
研究活動の紹介(中村 元研究員;里地里山文化)

福井県の里山里海湖文化の解明に取り組んでいきます

 

研究の目的


 多様な自然環境(中山間部、平野部、台地、盆地、湿地、河川流域、汽水湖、海洋沿岸)によって育まれた県内各地の生活文化について、文献と現地調査によりその歴史と現状、現代的動態について解明することが研究の目的です。そのために、多様な自然環境と対応する里山里海湖(川)の各地域をバランスよく選択して現地調査を実施します。各地の事例を比較検討し統合することで「福井の里山里海湖文化論*1」の構築を目指します。

 各地域に固有な里山里海湖文化が明らかになると想定されます。それらの研究成果を基に、個々の関係性を明らかにするために、「森・川・湖・海の連環」または「流域圏」、「交易圏」などの視点より、個性的な各地域がどのように歴史的に関係してきたのか?もしくは関係しているのか?を問うことにより、福井の里山里海湖文化の全体像が明らかになると考えます。

 福井の里山里海湖文化の全貌解明が研究の重要課題ですが、そのためには各地における詳細な民俗学研究が必要です。これより、自然・社会環境、なりわい、経済、歴史、信仰、食文化の過去と現在を認識することができ、現代的な課題が浮き彫りにされると考えます。後継者や過疎化の問題、開発―保全―住民生活のバランスの問題に対して、実証的な研究成果に基づいた提案が可能になると期待されます。

 地域のミクロな問題解決に貢献できる実学的研究とともに、各地域の文脈にそった教育プログラムを作成実践することで、次世代を担う若者層への自然・社会環境教育や人材育成を行うことも研究の全体構想に含まれています。その一つとして、大学教育への積極的な参加があります。平成27年度には、福井県立大学において、福井の里山里海湖の自然文化を知るための学生実習を予定しています。そこに研究所が主体的に関わっていきます。

 このような、里山里海湖文化についての研究を基盤とした、地域振興、環境教育、大学教育、次世代育成への取り組みは、国内に広く参照してもらえる実学研究の事例として重要です。同時に、日本の伝統的な「里地里山」の生活様式に、地球環境問題の解決の糸口を見出そうとする昨今のSATOYAMAイニシアティブの動向にも、「福井モデル」を提示することで貢献可能であると考えています。

 *1 方針の一つとして、自然、なりわい、経済、信仰が集約された「食文化」を軸に、福井の里山里海湖文化論をまとめることも可能であると想定しています。

 

調査地(図参照)と調査地選定の理由


 ・ 嶺北:九頭竜川流域、三国沿岸、越前の里山地域、北潟湖
 ・ 嶺南:三方五湖周辺、小浜沿岸、名田庄の里山地域
 ・ 全域:福井の食文化
     * 研究の進展具合により調査地の変更・増減はあり得る

 嶺北では、九頭竜川流域を事例に、森・川・湖・海の連環について探求することを意図して調査地を選択します(九頭竜川流域の適地と河口部の三国沿岸)。さらに、平野部で九頭竜川に合流する日野川流域(越前の農村工芸文化、例えば和紙をめぐる自然・社会環境)でも調査を行う予定です。北潟湖での調査は、福井の代表的な汽水湖として三方五湖との比較研究、教育プログラム作成、大学実習地のために必要です。

 嶺南では、年縞やラムサール湿地、自然再生協議会を擁する三方五湖での調査を、北潟湖との比較のうちに進めます。豊富な伏流水が豊かな漁場を形成する小浜沿岸では、里海文化とともに、この地域に固有の食文化(鯖のへしこやなれずし)にも注目して調査を行います。日本における暦・陰陽師のかつての本拠地であり、特異な習俗が残る名田庄地域では、里山生活文化(奥山における狩猟文化も含め)に加え、祭りや民間信仰に焦点を当てた調査を想定しています。

 また、福井全域をカバーする研究として、多様な自然環境によって育まれた多彩な「福井の食文化」に注目します。各調査地の食文化を統合するとともに、豊富な文献(農文協のシリーズ、ルーラル電子図書館など)や民俗資料(例えば御食国若狭おばま食文化館)を活用しながら研究を行います。

 以上の研究計画は、福井県里山里海湖研究所を中心に、県内外の研究機関の研究者との共同研究として実施します。多くの研究者が福井県で調査研究をすることで、「里山」研究のメッカとなることが期待されます。


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図 調査地と研究テーマ
 

 


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