福井県里山里海湖研究所

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2015年06月のコラム
  • 北川淳子
    3月に日向湖と菅湖、4月に三方湖と久々子湖でボーリング調査を行いました。
    日向湖と菅湖は水深が深いため、深いところでも堆積物が採取できるマッケラスコアラーという道具で堆積物を採取しました(写真1)。久々子湖と三方湖では、手掘りの道具、夏原式ピストンコアラー(写真2)とロシア式ピートサンプラーの両方を使い、採取しました。
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    (写真1)マッケラスコアラー(撮影地は三方五湖ではありません)パイプを押し込んだ後、大きなドラムに空気をため、浮上させます
     
    (写真2)夏原式ピストンコアラー。筒状の部分に堆積物が取れてきます
     
     日向湖は深くて難しい上、当日雨が降り、とても大変でした。なんとか2本のコアを引き上げる事ができました。雨の中、水質調査、湖底の表層の泥の採取も行いました。湖底の泥は、湖底が無酸素のため、硫化水素のにおいがきつく、真っ黒でした(写真3)。また、底に落ちた針金などは黒い物質に覆われていました。面白い事に、中は酸化されることなく、落ちた時の状態のままでした。何はともあれ、2本のコアを採取することができました。
     
     3.jpg(写真3)日向湖から上がってきた湖底の最上部の堆積物。

     
     菅湖では比較的天候に恵まれ、日向湖のように雨に降られることもありませんでした。ここでも水質調査、湖底の表層の泥の採取を行い、マッケラスでコアを採取しました。やはり、底は無酸素状態で、やはり硫化水素のにおいがしました。湖底の表層部分は、年縞らしき縞が確認されました(写真4)。ここではなんとか3本のコアを採取できました(写真5)。
     
     
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    (写真4)菅湖の湖底の最上部の堆積物。よく見ると縞が見えます (写真5)マッケラスコアラーが浮上したところ。菅湖にて
     
     4月、天候に恵まれ、久々子湖と三方湖の調査をしました。こちらは湖が浅く、手掘りで行いました。浅い場合、マッケラスでは採取不可能です。
    夏原式ピストンコアラーでは、手掘りなので2m程度ぐらいまでしかどうも押し込めません。島根大学の瀬戸先生がだいぶ頑張りましたが(写真6)、やはり2m弱しか堆積物は取れませんでした。2m弱では縄文時代まではいきそうにないので、ロシア式ピートサンプラーをその下の堆積物をとるために利用しました。こちらは直径が小さいので、押し込みやすくなっています。なんとか、350cmほどの堆積物の採取に成功しました。
    三方湖の調査では若狭高校の生徒さんたちがたくさん参加しサンプル採取にチャレンジしました。静岡県のふじの国地球環境史ミュージアムの山田准教授の説明を熱心に聞き(写真7)、サンプル採取は成功しました。湖の下の堆積物の固さを十分に体験したようです。このサンプルは、研究所と島根大学、立命館大学の共同で分析をすすめますが、若狭高校の生徒さんもSSHのプロジェクトで利用できるように保存しています。
     
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    (写真6)夏原式ピストンコアラーを湖底に押し込む (写真7)サンプルの採取方法を説明する山田先生とそれを聞く若狭高校の生徒さん



     これらの調査が終わり、今度はサンプルを分ける作業をしました。長いサンプルがたくさんあり、作業は数日かかりました。まだ、分けられていないものもあります。
    堆積物の中で、日向湖のサンプルは年縞が認められました(写真8)。こちらの年縞は水月湖に比べて薄く、わかりにくいものです。これを軟X線で写真をとり、分析をすすめていく予定です。菅湖の堆積物にも年縞があるのでは、と思っていたのですが、最近の堆積物にはどうも形成されていますが、下のほうはないようでした。日向湖も菅湖も、たくさんの葉が挟まれていました。これを年代測定して、過去の環境変遷を解明していきたいと思います。
    久々子湖と三方湖の堆積物は上から下まで均質なのっぺらぼうの堆積物でした(写真9)。30年ほど前の調査では、10mの堆積物で18000年前とでていますので、縄文までサンプルが採取できているのではと思っています。
    楽しい調査が終わり、これから分析をしていかないといけません。その結果は研究発表会で紹介したいと思っています。
     
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    (写真8)マッケラスで採取した日向湖の堆積物の一部。よく見ると年縞が見える (写真9)夏原式ピストンコアラーで採取した堆積物コア

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