福井県里山里海湖研究所

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北川淳子 の論文
研究活動の紹介(環境考古)

湖沼堆積物の環境考古学的研究による福井県の里山景観の変化の復元

 

研究概要

 文字による歴史記録に残されていない時代の環境を知る手法として、湖沼堆積物を利用する事が注目されています。湖沼堆積物は様々な粒子(花粉や珪藻、汚染物質など)が含まれ、それらが堆積した当時の環境を記しています。堆積物は下から上にたまる性質上、それを下から上に順にしらべることで、時代に沿った環境変化が復元できます。

 日本の森林被度は約66%、耕作地は約14%が耕作地として利用されていますが、里山の景観は森林から耕作地へ広がり、里山の面積は国土の40%にも広がります。この起源は縄文時代にあり、その時代から里山は人間活動にとって重要な森林資源を提供してきました。弥生時代には稲作が伝わって以来、低地には水田が広がり、川や海の魚をタンパク源として獲る稲作漁労文化の里山の景観を発達させてきました。さらに、律令制崩壊後のAD1000年前後には現在見られるような広大な水田とその周辺の景観が大規模に発達したことが、秋田県一の目潟の調査からわかってきています。その後、小氷期に人口減少による農地の放棄や、現代的な森林学の導入による植林、エネルギー革命、化学肥料の利用、減反政策などによる農地の放棄など景観変化の要因がたびたび起り、特に戦後の拡大造林時代以降、里山の景観は大きく変化しています。現代的生活が導入されてくる中で伝統的景観が失われ、自然との関わりが変化し、日本では持続的資源利用の観点から里山の保全活動が行われ、観光資源としての活用が行われています。この中で、福井県は多くの里山の景観を保存していますが、里山の起源である縄文時代の遺跡も多く存在し、里山の形成から現在に至までの里山の環境変化の記録が湖の堆積物に残されています。

 若狭町の水月湖には年縞堆積物という1年ごとの縞を形成する堆積物があります。縞を数える事で正確な年代を知る事ができ、この炭素14Cを測定する事で、炭素14年代測定の世界の標準となりました。つまり、ここの堆積物は世界一正確な年代を示すということです。これを利用して、福井県の里山の景観がどのように変化してきたかを正確な年代軸に沿って解明できる可能性があります。しかしながら、水月湖周辺は周辺が山に囲まれ、平野が少なく、また、縄文からの遺跡は見つかっていません。そこで、水月湖は年代の基準であるとともに、周辺の人間活動の少ない湖として、他の周辺の人間活動の活発な湖、三方湖や久々子湖、北潟湖の景観の変遷を調べ、景観変遷の地域差を比較して行きます。
 

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写真:水月湖の年縞堆積物。炭素14年代測定の世界基準となっている。
   

 

明らかにすること

1)堆積物の採取と年縞計測と炭素⒕年代測定による高精度の年代決定

 水月湖と三方五湖の他の湖と北潟湖を採取し、年縞計測と炭素14での年代決定を行います。

2)年縞堆積物の花粉化石データによる里山景観史の構築

 縄文時代の里山起源、稲作の導入された弥生時代、そして、荘園開発が活発であった9世紀から10世紀ごろ、江戸時代の飢饉、戦後の5時代に焦点をあて、5〜10年程度の高時間分解で花粉分析を行い、福井県の里山の景観変遷を復元します。

3)福井県の里山景観の形成と変遷について検討

 花粉分析によって解明された里山の景観変遷と歴史記録や絵図、古地図と比較し、中世温暖期での農地拡大、小氷期の人口減少による農地放棄、日本での江戸期の森林保護の効果、現代的森林学の導入や農地の放棄、災害による影響を検討し、これを基にして地域による変化の違いや変化のタイミングの違いなどを明らかにします。
 

意義

 里山景観の歴史は、長期に渡る人間と自然との関わり合いの歴史でもあり、即ち、自然資源の持続的利用の歴史と言えます。里山における様々な環境問題を抱える現代社会にとって、里山景観史を明らかにすることは、福井県の人間と自然の関わりの歴史をより具体的に知る事となり、これからの人間と自然のあり方を考える上で非常に重要です。また、結果は福井県の環境教育、歴史の資料ともなり、観光資源にも役立てることが可能です。
 

調査地

 三方五湖および北潟湖
 

研究協力体制

・北川淳子(福井県里山里海湖研究所)
  花粉分析、全体のまとめ
・中川毅(立命館大学・教授)
  水月湖年縞堆積物採取、水月湖年縞の年代コントロール、テフラ(火山灰)年代の情報提供
・篠塚良嗣(立命館大学・研究員)
  コアの採取、化学的分析によるマイクロテフラの同定、湖の環境変遷史構築
・瀬戸浩二(汽水域研究センター・准教授)
  三方五湖のコア採取、水質調査、化学的分析による湖の環境変遷史構築
・山田和良(静岡ふじのくに地球環境史ミュージアム・准教授)
  三方五湖のコア採取・コアの記載
・吉田明弘(明治大学・専門研究員)
  北潟湖コア採取、花粉分析
 

 


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