福井県里山里海湖研究所

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石井 潤のコラム
  • 石井 潤
     近年、全国各地の湖沼において、浮葉植物であるヒシ属植物Trapa L.の分布面積が著しく増加し、生物多様性や生態系サービスの利用において負の影響を及ぼしているという理由から、その対策が課題になっている事例が多く見られます。
     自然再生推進法に基づく法定協議会である三方五湖自然再生協議会が、自然再生の取組みを行っている三方五湖においても、その1つ三方湖においてヒシTrapa japonica Flerovが2008年以降急速に分布拡大し、その対策が課題となっています。そこで、三方五湖自然再生協議会外来生物等対策部会では、2016年にヒシの管理方針を定めた「三方五湖自然再生事業 三方湖ヒシ対策ガイドライン」(4.9 MB)を作成しました。
     一般的に、ヒシ属植物の対策として、その場所における根絶または低密度化に向けた刈取りが行われます。刈取りの方法としては、植物体を手で引き上げたり道具を使って引き上げる“手刈り”や、水草刈取り船を使った“機械刈り”が用いられています。また、漁業者が自分の船舶に自作した水草刈取り機を装着して刈取りを行っている事例もあります。
     三方五湖自然再生協議会外来生物等対策部会では、2015年から、地元の漁協である鳥浜漁業協同組合の提案により、ヒシの刈取り方法の1つとして、“ワイヤー刈り”を試行してきました。福井県里山里海湖研究所では、2016年に、ヒシの生活史を考慮したワイヤー刈りによる刈取り方法の効果を検証するための実験を行い、その有効性を確認しました。
     そこで、ヒシ対策に取組んでいる現場で役立てられるように、ワイヤー刈りによるヒシの刈取り方法を解説したマニュアルを作成し、公開することとしました。また、ワイヤー刈りによるヒシの刈取り方法の具体的な手順などを紹介する動画を作成しましたので、併せて公開いたします。
     
     『浮葉植物ヒシのワイヤー刈りマニュアル』3.3 MB
     

    ~(動画) 浮葉植物ヒシのワイヤー刈りによる刈取り方法~
     
     ワイヤー刈りによるヒシの刈取り方法を動画でご紹介します。各タイトルをクリックすると、YouTubeにアップロードした動画をご覧いただけます。
     操船者は、鳥浜漁業協同組合の元組合長である増井増一氏です。ヒシの刈取りに使用している小型船舶は、増井氏所有のものです。(2)と(3)の動画は船上で撮影しており、画面が大きく揺れている箇所があるので、ご注意下さい。
     
    (1)ワイヤー刈り装備の水中への導入(14秒)
     (説明)ワイヤー刈り装備をどのように水中に導入しているかを動画でご紹介します。
     【撮影日:2016年9月】
     
    (2)ワイヤー刈り装備によるヒシの刈り取り(54秒)
     (説明)ワイヤー刈り装備を使ってどのようにヒシの刈取りが行われているかを動画でご紹介します。ワイヤーで刈取られたヒシの浮葉が、水中に沈んで見えなくなるのが分かります。動画の後半部分では、ヒシが多量に引っかかったために、ワイヤーが浮力で浮き上がってくる様子が確認できます。
     【撮影日:2017年6月】
     
    (3)ワイヤー刈り装備に引っかかったヒシの除去(2分8秒)
     (説明)ワイヤー刈りによるヒシの刈り取り作業中、ワイヤー刈り装備に引っかかったヒシをどのように除去しているかを動画でご紹介します。動画の後半部分で、ワイヤー刈り装備の一部である鉄棒が曲がっているのが映っていますが、これはヒシの刈取り作業中に障害物に引っかかったときに曲がったものです。多少曲がっていても、刈取り作業は問題なく実施できています。むしろ多少曲がっている方が、最後に、鉄棒とワイヤーをヒシを外しながら船の上に引き上げるときに、作業がしやすいかもしれません。
     【撮影日:2017年6月】
     
    (4)9月に作業を行った事例(2分3秒)
     (説明)ワイヤー刈りは、5~6月に行うことが推奨されますが、それ以外の時期でも実施可能です。この動画では、9月に作業を行った事例をご紹介します。
     【撮影日:2016年9月】
  • 石井 潤

     最近、テレビなどでドローンという言葉をよく耳にします。ドローンは、命令を受けて自律飛行する飛行物体のことを指し、別の用語のUAV(Unmanned aerial vehicleの略:無人飛行機)と同義に使われることもあります。テレビなどでは、主にマルチコプターを指して、ドローンという言葉が用いられているように思います。マルチコプターは、ヘリコプターの1種であり、ローター(回転翼)が3つ以上の回転翼機のことを指します。今年の夏と秋、慶應義塾大学一ノ瀬友博研究室と清木康研究室によるUAVを用いた空撮(上空から地上の写真を撮影すること)の機会に同行させていただきました。そこで、そのときの写真を参照しながら、UAVによる写真撮影とはどういうもので、どのように役に立つのか、その利用可能性について紹介したいと思います。

     UAV(ドローン)には、大別して2タイプがあります。1つは、上述のマルチコプタータイプです(写真1:清木研究室所有のInspire 1)。ローターの数が4つの場合はクワッドコプター(機種の例:Phantom 3、Inspire 1など)、6つの場合はヘキサコプター(機種の例:Hornet、Boomerang、Spider、Trimble ZX5など)、8つの場合はオクトコプター(機種の例:X1000)と呼びます。もう1つは、飛行機のような翼をもった固定翼タイプです(写真2:一ノ瀬研究室所有のeBee/その他の機種の例:Trimble UX5、Gatewing X100)。
     

    inspire1.jpg ebee.jpg
    写真1. マルチコプタータイプのUAV(例.Inspire 1) 写真2. 固定翼タイプのUAV(例.eBee)


     いずれのタイプのUAVも、備え付けられたカメラで上空から地上を撮影することができますが、その特徴は異なります。マルチコプタータイプのUAVは、飛行可能時間が概ね20分程度までであるのに対して、固定翼タイプのUAVは、概ね30~50分程度です。飛行可能時間が長くなるとそれだけ長い距離を飛行できるので、固定翼タイプのUAVの方がより広い範囲の地上を撮影できるということになります。実際に、固定翼タイプのeBeeは、1回の飛行で約150 ha(1.5 km2)の範囲を撮影できるのに対して、マルチコプタータイプのUAVでは数百mの範囲に限られます。eBeeは完全自律航行を行い、自動で飛行しながら垂直方向(真下方向)の写真撮影を行う点も大きな特徴の1つです。eBeeは手動での操作をほとんど行う必要がありません。写真3は、eBeeで撮影された福井県里山里海湖研究所付近の写真です。写真の左やや下側には、三方湖の湖面に浮かぶ浮葉植物ヒシのロゼット(葉っぱの集まり)が映っており、小さいロゼットの集まりを判別することができます。1回の飛行で、鮮明な写真を広い範囲にわたって撮影するeBeeの能力には、とても驚きました。
     

    ebeeview1.jpg  
    写真3. eBeeで撮影された福井県里山里海湖研究所付近の写真  


     一方、マルチコプタータイプのUAVは、飛行可能時間は限られているものの、手動による操作によって特定の対象を多方向から詳細に写真撮影することができます。機種によって、垂直方向や水平方向、斜め方向からの柔軟性の高い写真撮影を行うことができます。写真4~6は、Inspire 1によって撮影されたものですが(いずれも、慶應義塾大学清木研究室 古瀬達哉君による撮影)、被写体を自在に撮影するその能力には、やはりとても驚きました。後述しますが、このように自在な写真撮影は、撮影者の技量によるところも大きいと言えます。
     

    inspire1view1.jpg inspire1view2.jpg
    写真4. Inspire 1で撮影された垂直方向の写真 写真5. Inspire 1で撮影された水平方向の写真
     
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    写真6. Inspire 1で撮影された斜め方向の写真  
     

     マルチコプターでは、これらの写真撮影に加えて、動画撮影が可能な機種があることも特徴です。また基本的に、UAVの動作はGPSを用いてリアルタイムで計測される位置情報に基づいて制御されますが、マルチコプターの中には、位置情報が取得できない条件でも飛行する能力をもった機種があります。この機能があれば、GPSが利用できないような橋の下や室内環境でも、精度の高い写真撮影を行うことが可能となります。さらに、マルチコプターの中には、eBeeと同じように、自動で飛行し写真撮影を行う能力をもった機種もあります。
     
     以上をまとめると、固定翼タイプのUAVは、より広域の範囲を対象とした垂直方向の写真撮影を行い、詳細な土地被覆(水田や森林、湖、川、住宅地の配置や面積など)を把握するのに威力を発揮すると言えます。具体的には、自然環境の変化をモニタリングしたり、洪水などの自然災害が発生した場合、どこでどのような被害が生じたのかを把握することなどに利用できると考えられます。一方、マルチコプターは、特定の場所の詳細な写真撮影または動画撮影を行う際に有用であり、利用用途として、特定の範囲の環境調査や、やはり自然災害時に利用するなら各災害発生場所の詳細な情報の取得などが考えられます。
     
     固定翼タイプとマルチコプタータイプのUAVを利用する際の大きな違いとして、上述したように、手動での機体の操作方法が挙げられます。前者では自動飛行を行い、主な操作は離陸させる操作のみです。飛行時は、パソコンなどで機体の状態をモニターすることができます。バッテリー残量の不足や飛行に問題が生じたときは、eBeeの場合、自動的に帰還する設定になっており、帰還命令を出すこともできます。着陸時は、飛行機と同じように着陸態勢に入り、胴体着陸します。注意点として、機体本体が電線などを識別し回避する能力をもっていないため、事前に障害物がない飛行ルートを選んでおく必要があります。離発着場所は、GPSに誤差が生じることも考慮すると、50 m×50 m程度の障害物のない空間(例.小学校のグランド、休耕田など)を選ぶ必要があります。

     マルチコプタータイプのUAVは、離陸から飛行、写真撮影、着陸まで、手動によって操作するために、操作技術の習得が必要になります。操作技術に習熟するまでに操作ミスにより墜落した事例が報告されており、安全な場所での一定以上の練習が不可欠と言えます。操作ミスの原因は、操作の不慣れに加えて、予想外の気流や、遠方での飛行状況の視認の困難、電波の送受信の障害によるコントロールの不能などが挙げられます。離発着場所については、垂直方向の移動ができるため固定翼タイプのUAVのような広い空間は必要とせず、操作技術が上達すれば写真6のような比較的限られた場所での離発着も可能です。
     
     固定翼タイプとマルチコプタータイプのUAVのいずれにおいても、撮影された複数枚の写真を合成して1枚の写真にしたい場合、付属のソフトウェアがなければ、別売りのSmart3DcaptureやPix4Dmapper、Photoscanなどのソフトウェアが必要になります。Smart3DcaptureやPix4Dmapper、Photoscanには、三次元画像を作成する機能もあります。
     
     UAVには、以上のような特徴以外にも、機種ごとに様々な機能があり、それらが値段の違いに反映されています。もし購入を検討する場合は、利用目的は何か?、離発着場所が確保できるか?、マルチコプターの場合操作を練習する場所があるか?など、多様な視点から検討する必要があると考えられます。平成27年9月には航空法の一部が改正され、12月からは、「無人航空機の飛行ルール」(国土交通省:「無人航空機(ドローン・ラジコン等)の飛行ルール」、http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)が適用されることになりました。今後、飛行ルールを順守した安全な利用のもと、多様な分野での活躍が期待されます。

     
  • 石井 潤

     里山里海湖と聞いて、皆さんはどのような自然を思い浮かべるでしょうか?里山里海湖は、文字通り里の山や海や湖であり、私たちが暮らしている場所にある身近な自然と言い換えることができます。近年、この日本の身近な自然が“SATOYAMA”として世界的に注目されています。

     SATOYAMAに代表される自然環境として、農村地域の自然があります。稲作を行う水田とその周辺にある水路や河川、ため池や草原、森林などを含む自然です。稲作が始まり、現在のような農業技術がなかった頃、水田は河川の氾濫原を利用して作られたと考えられています。当時は、高度な技術がなかったため、自然の状態をうまく利用して稲作を行っていました。
     氾濫原は、大水のときなどに時々冠水する場所です。そういった場所は、水がたくさん必要な水田に適しています。氾濫原では、川や氾濫原の中にできた池から水が引きやすかっただろうと考えられます。もしかしたら、氾濫原にできた小川が水田に水を引くための水路として利用されたかもしれません。氾濫原やその周囲に成立していた草原や森林は、稲作に必要な肥料の採集場所だったり、水田の近くで住む家を建てるための建材などを調達するための場所として利用されました。
     こうして人に利用されながら成立した農村地域の環境は、氾濫原に元々生息・生育していた生きものにとっては、水田が作られる以前の環境とそれほど大きく違っていなかったと考えられます。そのため、氾濫原の豊かな生きものたちは、そのまま生存することができたと考えられます。

     SATOYAMAでは、人々は、そこにある多様な里の恵み(自然資源)を利用して暮らしてきました。その営みは、SATOYAMAの環境を維持することにつながりました。たとえば、屋根をふくのに用いる茅を刈る場所は茅場として管理され、その結果、草原が維持されることになりました。森林では、下草刈りや落ち葉をはじめとした利用や管理によって、落葉樹などの林として長らく保全され利用されてきました。

     このようにSATOYAMAでは、その長い歴史の中で、豊かな生きものと環境が保全されながら、その恵みが利用されてきました。これは、人の不適切な自然資源の利用によって発生する様々な環境問題の解決へのヒントを与えてくれるものと期待されます。SATOYAMAの営みは、将来世代にわたって続く私たちの暮らしにおいて、自然環境を保全し維持しながら、自然資源を持続的に利用していくという考え方を示しています。
     研究所の名前でもある“里山里海湖”は、このような里の自然を大切にしながら上手に利用し、私たちの暮らしに役立てていこうという思いが込められていると思っています。

福井県里山里海湖研究所

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