福井県里山里海湖研究所

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石井 潤
里山里海湖の保全

 里山里海湖と聞いて、皆さんはどのような自然を思い浮かべるでしょうか?里山里海湖は、文字通り里の山や海や湖であり、私たちが暮らしている場所にある身近な自然と言い換えることができます。近年、この日本の身近な自然が“SATOYAMA”として世界的に注目されています。

 SATOYAMAに代表される自然環境として、農村地域の自然があります。稲作を行う水田とその周辺にある水路や河川、ため池や草原、森林などを含む自然です。稲作が始まり、現在のような農業技術がなかった頃、水田は河川の氾濫原を利用して作られたと考えられています。当時は、高度な技術がなかったため、自然の状態をうまく利用して稲作を行っていました。
 氾濫原は、大水のときなどに時々冠水する場所です。そういった場所は、水がたくさん必要な水田に適しています。氾濫原では、川や氾濫原の中にできた池から水が引きやすかっただろうと考えられます。もしかしたら、氾濫原にできた小川が水田に水を引くための水路として利用されたかもしれません。氾濫原やその周囲に成立していた草原や森林は、稲作に必要な肥料の採集場所だったり、水田の近くで住む家を建てるための建材などを調達するための場所として利用されました。
 こうして人に利用されながら成立した農村地域の環境は、氾濫原に元々生息・生育していた生きものにとっては、水田が作られる以前の環境とそれほど大きく違っていなかったと考えられます。そのため、氾濫原の豊かな生きものたちは、そのまま生存することができたと考えられます。

 SATOYAMAでは、人々は、そこにある多様な里の恵み(自然資源)を利用して暮らしてきました。その営みは、SATOYAMAの環境を維持することにつながりました。たとえば、屋根をふくのに用いる茅を刈る場所は茅場として管理され、その結果、草原が維持されることになりました。森林では、下草刈りや落ち葉をはじめとした利用や管理によって、落葉樹などの林として長らく保全され利用されてきました。

 このようにSATOYAMAでは、その長い歴史の中で、豊かな生きものと環境が保全されながら、その恵みが利用されてきました。これは、人の不適切な自然資源の利用によって発生する様々な環境問題の解決へのヒントを与えてくれるものと期待されます。SATOYAMAの営みは、将来世代にわたって続く私たちの暮らしにおいて、自然環境を保全し維持しながら、自然資源を持続的に利用していくという考え方を示しています。
 研究所の名前でもある“里山里海湖”は、このような里の自然を大切にしながら上手に利用し、私たちの暮らしに役立てていこうという思いが込められていると思っています。

福井県里山里海湖研究所

福井県里山里海湖研究所

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