福井県里山里海湖研究所

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水月湖の年縞

 水月湖は、三方五湖の中でも一番大きな湖です。この湖の底には、7万年以上の歳月をかけて積み重なった「年縞(ねんこう)」と呼ばれる縞模様があります。水月湖の年縞は、いくつかの奇跡が重なってできた世界的に珍しい貴重なもので、考古学や地質学における年代測定の「世界標準ものさし」に採用されました。


年縞(ねんこう)とは

 

 年縞とは、湖底などの堆積物によってできた縞模様のことです。縞模様は季節ごとに異なるものが堆積することにより形成されます。春から秋にかけては土やプランクトンの死がいなどの有機物による暗い層が、晩秋から冬にかけては、湖水からでる鉄分や大陸からの黄砂などの粘土鉱物等によりできた明るい層が1年をかけ平均0.7mmの厚さで形成されます。

なぜ年縞が形成されたのか

 7万年以上の歳月にわたり、乱れのない年縞が積み重なった水月湖には、地形や周辺環境における4つの条件がありました。

 

①流れ込む大きな河川のない地形

 水月湖には、直接流れ込む大きな河川がなく、三方湖で緩やかになった流れが静かに注がれるため、水の動きがほとんどありません。そのため、大雨による大量の水の流入がなく、湖面の水がかきまぜられず、堆積物が静かにたまっていくことができました。



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②山々に囲まれた地形

 周囲が山に取り囲まれていたため、風が遮られ、波が起こりにくいことにより、湖水がかき混ぜられることがありません。
 

③生物のいない湖底

 水月湖は、水深が最大で34mと深く、湖水がかき混ぜられないため、湖底近くには酸素がありません。そのため、湖底に堆積物をかき乱す生物がいません。
 

④埋まらない湖

 通常、湖は堆積物が積もり続ければ、水深が浅くなっていきます。しかし、水月湖は、周辺の断層の影響で、長い間少しづつ沈降し続けています。そのため、水深が深いまま湖底に堆積物が溜まり続けています。

 このような、4つの条件が偶然に重なり、長い間年縞が形成されてきました。年縞は日本では8つの湖で確認されていますが、水月湖のように7万年もの連続性をもったものはありません。年縞形成におけるこのような条件が揃った湖は世界的にも珍しく、まさに「奇跡」の湖と言えます。

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世界標準のものさし 水月湖「年縞」

  
 世界中で発見された化石や遺物が、いつの時代のものかを知るには、過去の時間の長さを計る必要があります。その長さを計るものさしは、水月湖の年縞がその役割を果たしています。
 今から約5万年前までの年代を知る方法は、現在、世界中で広く用いられるのが「放射性炭素(炭素14)年代測定(※)」という方法です。しかし、この方法で求めた年代は正確でなくてはありませんでした。誤差を較正するにはその年代の炭素14を正確に把握する必要があるため、世界中で研究が行われていました。
 水月湖年縞においても1991年から研究が進められていました。そして、その研究は2012年7月にパリのユネスコ本部で開催された第21回世界放射性炭素会議総会において水月湖年縞とその研究データが評価され、2013年9月に約5万年までの年代を特定する「世界標準のものさし」として認められました。水月湖年縞により年代測定の精度は従来の精度から飛躍的に高まり、考古学や地質学などさまざまな研究に貢献しています。

 (※)炭素14年代測定
 動植物などに含まれる放射性炭素(炭素14)という物質を利用した年代測定方法。炭素14の量は、動植物の死後、新しい炭素が補給されなくなるため、その量が減り続けることから、その性質を利用して化石や遺物の年代測定を行います。

年縞から分かること

 年縞の研究は年代測定だけではありません。年縞は木の年輪のように1年で明暗1対の縞が出来ていくので、縞模様を数えることでその縞が何年前にできたものかが分かります。そして、その縞の中には湖周辺から飛来した木の葉や花粉などが含まれています。それらを調べることで、その当時に生息していた植物の種類やその移り変わり、また、その植生から当時の気候や環境も分かってきます。その他にも、火山灰からは火山噴火活動や黄砂からは偏西風の風向きの変化、また、堆積層の変化からも洪水や地震の履歴を知ることが出来ます。
 こうした研究は、地球温暖化の解明や自然災害のメカニズム、人類史の解明など、今後の研究成果に期待が寄せられています。  



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年縞に含まれる葉の化石

水月湖「年縞」の利活用に向けて

 

 福井県では、「年縞」の学術的価値をさらに高め、教育や観光資源などにも活かすため、2014年7月1日から約2カ月をかけて円柱状の年縞を採取しました。採取には年縞研究の第一人者である立命館大学古気候学研究センターの中川毅教授の協力を得て実施しました。

 採取した年縞は展示用に加工し、今後、国立科学博物館など県内外の博物館等で広く紹介していきます。また、年縞の価値を国内外にアピールし、研究、教育観光の拠点となる新たな施設整備の基本計画の策定を進めています。

 また、採取した年縞は里山里海湖研究所にて研究も行います。年縞を基に、過去の気候と人の暮らしの関わりを解明し、これからの生活に活用していきます。


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2014年水月湖年縞掘削作業風景
   

 

・平成30年9月15日(土)に福井県年縞博物館が開館します。(博物館ホームページへのリンク)

・水月湖年縞を分かりやすく解説したパンフレットとパネルがご覧いただけます。(福井県自然環境課ホームページへのリンク)

・水月湖年縞の解説映像がご覧いただけます。(福井県自然環境課ホームページへのリンク)
 

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