12月21日(水)に宮本研究員が毎月実施している三方五湖の水質調査に同伴しました。毎月欠かさず、水温や塩分、水中の酸素濃度等を久々子湖・水月湖・菅湖・三方湖で測定します。冬の調査は、湖上ということもあり寒さが極まっております。三方五湖は日本海とつながっているという特徴があり、水は塩分を含む汽水であるほか、日本海の海面上昇や温暖化といった気候変動に影響を受けると思われます。宮本研究員は、そういった近年の海面上昇や温暖化に加えて、自然に任せたものではないコンクリート護岸などの歴史的な人為改変が、水環境と湖底に住む生き物に与えた影響を統計的に評価しようとしています。歴史的な人間活動を調査し、データベース化することで、次世代の研究にも活かせる過去・現在・未来をつなげるような長期的な目線での研究です。

(水質調査)
調査時に興味深い話をいくつか聞けましたので、紹介します。
1つ目は浦見川についてです。
水月湖と久々子湖をつなげる水路があります。それは、約350年前に作られた人工的な水路(浦見川)です。現代のような綺麗に整備された人工的な水路ではなく、今にも崩れてきそうな迫力のある岩肌の間を通る川のようでした。この水路が海とつながっている久々子湖と水月湖をつなぎ、水月湖を汽水にさせたのです。実際に通った感想ですが、迫力もあり、歴史を感じられて非常に良い経験でした。

(浦見川)

(浦見川岩肌)
2つ目は、汽水湖の特徴と年縞についてです。
水月湖等の深い湖に関して、水温に注視していると、ある深さで急激に変わっていました。また、塩分に関しても急激に変わることが分かりました。徐々に変わるのではなく、層のように分かれるのだと知りました。それは、高比重な塩水層の上に低比重な淡水層が乗った二層構造が壊されにくい閉鎖的な汽水域の特徴だそうです。
三方五湖は汽水という特徴があるため、琵琶湖(淡水)のように水温による全層循環(深いところより水面付近の水が冷えることで冷たい水が下に沈み酸素が供給される現象)が起きるということはあまり考えられません。水の温度差で生じる比重差よりも塩分の違いで生じる比重差のほうが大きいためだそうです。したがって上下の層が混ざることがないため、下層部分は十分に酸素が供給されず、酸素を必要とする生き物がすめなくなります。こうして下層が荒らされず、きれいに黄砂や花粉などが堆積していったものが年縞と呼ばれるものです。1つ目の話にもあったように汽水になったのは最近なのではないかと思い、長い間汽水だったのか聞いたところ、平安~江戸時代までは淡水湖だったそうです。では、なぜそれなのに7万年分も年縞が連続しているのでしょうか。それは地形等の様々な条件が重なって奇跡的に積もったものであり、非常に深い世界でありました。年縞博物館の案内を受けて、改めて考えてみたいものです。

(水質調査)